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子育て Vol.5|~正論はイタイ~

関 恵子

次女がまだ年中の頃。お恥ずかしい話ですが、幼稚園の歯科検診で、はじめて虫歯が発見されました。虫歯イコール歯医者の受診。…私は、この想定に一抹の不安を感じました。ナゼなら…。それまでも、歯科にはフッ素の塗布に何度か行ったことがありましたが、とにかくジッとしていなかったからです。何か痛いことをされるわけでもなく、キーンなんて金属音がするわけでもなく、ただ、診察台に寝かされて少々変な味がするものを塗られるだけ。ほんの少し『我慢』をすれば、あっという間に終わる出来事。でも、グズグズ言うし、塗布されている間モゾモゾ動くし。(…大丈夫かな。今度は塗布じゃなく治療だし。ジッとしておいてほしいんだけどな)そんなことを思いながら、いつもの歯科を受診しました。

そして…。診察台の上は大変なことになりました。泣き叫んで台から降りようとする次女の体を歯科衛生士さんと私で押さえつけ、何とか治療を施してもらおうとするのですが、首は振るし、口は開けないし…。結果、歯科の先生から頂いた言葉は、「小児歯科に行ってください。体をくくりつける器具がありますから。ここでは動いて危険なので」というもの。淡々とお話しされる先生のお顔を拝見しながら、恥ずかしくてたまりませんでした。情けなくてたまりませんでした。次女のことがではなく、私自身が、です。

…次女は『我慢ができない子』でした。
それはつまり、私自身が『我慢をさせきれない親』だったということです。もちろん、声はかけました。銀行の待合、病院の待合、買い物の途中、ジッと待つことができずに動き回ったり走り回ったりしようとする次女に、「座っといて」「今はジッとして」「我慢しなさい」等々、何とかしようと試みたつもりでしたが、いつもいつも、やっぱり言うことは聞いてくれませんでした。

私はいつも、「どうしてこの子はこうあるんだろう」そればかり考えていました。…そうして、突きつけられた「うちでは無理です」の言葉。正直、泣きたかったです。いいえ、泣きました。「この子をどうしていいかわからない」頭の中にはそれしかありませんでした。そう言えば、通り道に小児歯科があったっけ。あそこに行ってみよう。でも、また今度ダメだしされたら、もう行くとこがなくなるかも。絶対ジッとさせなきゃ。「いい?今度行くところは絶対痛いこととか無いけん」「ジッとしとったら、あっという間に終わるよ」「泣いたり暴れたりせんって約束して」その歯科へ向かう道中、とにかく言って聞かせました。そして歯科へ着くと、問診表に受診に来た理由を記入しました。『他所の歯科で体をくくりつけることのできる小児歯科へ行ってくださいと言われたので』と。診察が始まり、私と同年齢くらいの女医さんは、問診票を見ながらちょっと眉をひそめられました。そして何も言わずに次女に診察台に上がるように声をおかけになりました。次女は…。泣きもせず、自分でちゃんと診察台に上がり、口を開けるように促されるとちゃんと口を開けるのです。今にも泣きそうな姿はありました。でも、必死で我慢している様子が見て取れるのです。(え、できたやん!できるやん!)私はちょっと、キツネにでもつままれた気分で眺めていました。

そして診察が終わり、次女を待合室へ行かせた後、その女医さんは私に仰いました。「お子さんはくくる必要なんかありません。お子さんはできるんです。お母さんがさせていないだけです」…何の言葉も返せませんでした。

確かに、仰る通りなのです。いつも、言うことを聞かなくなってから聞かせようとしていました。いつも、困ってから何とかしようとしていました。しつけをしているようで、ただ流れに任せていただけだったのです。この日のように、必死で、本気で、何とか言うことを聞かせようと、前以て言って聞かせたことなど、無かったのです。…でも。その女医さんの言葉は、痛すぎました。胸に刺さりまくりました。その通り。先生の言うことは、何も間違ってない。何の反論もできない。でも、すみません、気付いてなかったんです。言い聞かせることをしていないと分かってなかったんです。「何をどうしていいかわからない」それしか頭の中にはなかったんです。どうしてこの子は…と、次女のせいにばかりしてたんです。だって、言い聞かせてるつもりだったから…。長女にはそんなこと言わなくてもできてたから…。言い訳ならたくさん言えます。言えるものなら、女医さんに向かって言ってみたい。…でも、何も言えませんでした。だって、仰る通りなのですから。

 正論は、痛い。返す言葉がない。でも、気付かせてはもらえた…。でも、簡単にはできない…。

 虫歯の治療を滞りなく終えた後、私はあの歯科へは行っていません。痛い思い出に蓋をしました。未熟者でスミマセン。でも、『我慢をさせること』『言い聞かせること』には蓋をしなかったつもりです。…自分も次女も、簡単には変えられませんし、今も継続中ですケドね…!

関 恵子

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