数年前、新聞のエッセイの中で目にした言葉、『道に迷って道を覚える』。何かに迷ったときはこの言葉を思い出します。まさに、子ども達は今から様々な経験をし、時には道に迷い、失敗してもそこから学んで進んでいきます。迷うことがあってもそれは未来への道しるべ…..。何だかそう考えるとワクワクします。
私も20年前、初めての子育てをしている時まさに、道に迷っていました。いえ、迷っているどころか、お先真っ暗、暗い森の中で出口が見つからない…そんな状況でした。決して大袈裟ではなく、本気で、いつ光が射してくれるのか分からず、辛い毎日でした。私はよく、理解不能な息子の話題を出すことが多いのですが、実は長女に一番手を焼き ました。私を真っ暗闇に放り出した超本人ですから(笑) 2ヶ月くらいまではまだよかったのですが、3ヶ月頃人見知りをするようになってからが、厄介娘デビュー。 とにかく 「おかあさんじゃないとダメ!」家の中でもいつもぴったり、トイレもついてくる。両方の実家は泣き叫ぶから預けにくい。ペピーカーさえ、お母さんと離れたくないから乗らない。友達の家に行っても私の膝の上からおりないのでゆっくり話もできない。誰かがいる公園には行きたがらないので、誰もいない公園で二人きり…。
1歳半で弟が生まれたもんだからさらにエスカレート!少しでも娘と離れたくていろいろと出かけてみるのですが、これがまた逆効果…。毎日「おかあさん、おかあさん、おかあさん、おかあさん…」私は、この世から「おかあさん」という言葉が消えてしまえばいい、とまで思っていました。でも、『明けない夜はない』『止まない雨はない』というように3歳過ぎた頃、遠くの方からかすかな光が射し始めました。ようやく姉弟が二人で遊んでくれるようになったのです。まだまだ、思うようにいかずに泣き叫んだり、トイレについてきたりはしていましたが少しずつ、離れることができるようになってきました。
しかし、幼稚園に行くようになったらまた、毎朝離れるときに泣き叫ぶ日々…。恥ず かしながら年長まで泣いていました。小学生になっても、泣いて帰れないからと、先生が家まで送ってきてくださったことも一度ではありません。中学校でも「学校行かん!行ったら吐くー!」と言っては休むことも….。あー、今思い出しても辛くなります。そんな娘、何がきっかけだったのか吹っ切れて、すっかり今では、何もなかったような顔をしたイマドキのハタチのおねえちゃんです。
あの頃の私は、とにかく道に迷ってどうすればいいのかわかりませんでした。でも今思うと、娘に、強い母になるように育ててもらっていたのです。トラブルが起きるたびに悩みました。でもそのトラブルの数だけ、親としての言動を考えながら前に進んでいたのです。何をどう選択しながら子育てしていけばいいのか、暗い森の道を迷いながら見えてきたのだな、と今になって少し思えます。あの頃学び、今でも一貫して思うことは「私がしなければいけないのは、将来のためにこの子を強くしておくこと」。周りの大人が手を差し伸べるのは簡単。その方がその時は痛みも少ないし、辛くないし、トラブルも大きくならない。だけど、それが本当に子を持つ親としての責任を果たしていると言えるのか…。そうなると、大人が道しるべを示すこともあれば、自分で道を探させることもある。どっちがいいのだろう…そんな選択にまだ迷いながら、ガミガミ母さん継続中です。いつ完全に自立し、ホッとできる日が来るのかは私もわかりませんが、今は…やるしかない!
森の木幼稚園・くすの木学童塾 白水 奈々子