森の木幼稚園・くすの木学童塾 白水 奈々子
先日、大好きな絵本作家さんが逝去されました。『ねないこだれだ』で有名なせなけいこさん。せなさんの絵本は、母親になってからどれだけ読んだか分かりません。寝かしつけるために、恐ろしく低い声で読み聞かせをしていました笑。他にも『おばけのてんぷら』や『くずかごおばけ』など、大好きな絵本が沢山あります。きっとこれからも、永遠に受け継がれていくことでしょう。
また、その少し前に児童文学作家の中川李枝子さんも逝去されました。代表作は、誰もが知っている『ぐりとぐら』。一年生の教科書にでてくる『くじらぐも』のお話や、「となりのトトロ」の楽曲『さんぽ』の作詞もされています。
中川さんの絵本は、私も幼少期に読んだ記憶があったので、他にどんな絵本があるのか調べているうちに、ある本を見つけました。保育士をされていた中川さんは、当時の子供との関わりや、絵本を通してお母様方に伝えたいことを書いてありました。読み進めるうちに私自身の記憶の中での絵本がどんどんよみがえってきました。それは母と、そして我が子達との情景と共に…。
母は、退職するまでノンストップで忙しく働いていました。幼少期は、月曜日から金曜日まで母の実家に預けられ、土日だけ帰ってきて自宅で過ごしていたようです。(記憶には残っていませんが…)
しかし、そんな忙しい日々でも寝る前のひと時は、一緒に横になり絵本を読んでくれていました。その時に読んでもらっていたのが『ぐりとぐら』。そして『ぐるんぱのようちえん』『たろうのおでかけ』『はじめてのおつかい』『どろんこハリー』などです。『おふろやさん』という字のない絵本も大好きで、いつもお話を一緒に作りながら読んだり、前は気付かなかった絵を見つけて喜んだりしていました。
生前、母によく聞かされていた話があります。私が一年生になった頃、ある日突然、「本読むのは今日まででいい。明日からはもういいよ。」と言ったそうで、その時の寂しさをずっと覚えていると…。それほど、母にとっては娘とのかけがえのない大切な時間だったのでしょう。
私はというと、長女、長男の頃は、図書館へ通っては沢山の絵本を借りてきたり、買ったりして読みか聞かせをしていました。(次女は長女に任せていたような…)
もちろん寝かしつけの時も。でも、長女が寝てくれないんです…。ひどい時は1時間半くらい読み続けても寝ない。「もう一回!もう一回読んで!」とせがむ…。30分くらいならまだしも1時間を超えるとさすがに参ります。イライラします。憎たらしくなります…。イライラMAXの時は、娘も私も泣きながら叫びにも似た声で何度も何度も読んだこともあります。当時はその本が大っ嫌いで、見たくもなくて、どこか見えないところに追いやっていました。その気持ちは割と最近まで引きずっていて…笑。二度と見たくなかったのです。あの時の気持ちを思い出してしまうので。
中川さんの本に、同じようなことが書かれてありました。
「もう一冊、もう一冊」には、そのうち必ず卒業の日がやってきます。
子どもと一緒に物語や絵本を楽しむ、私にとってこれ以上幸せなことはない、至福の時でした。
これを読んだ時、「あー、私って…」と涙がこみ上げてきました。そこで、その大嫌いだった本を探してみたのですが…見つかりません。娘に聞いてみると、あっさりクローゼットの奥から出してくれました。久しぶりのあの表紙。ページをめくる前に次に書いてある言葉が分かるほど脳裏に焼き付いていました。改めて見ると、綺麗な色のとってもかわいい絵本です。なんだかやっとその本と和解できたような気がしました。遅すぎますけどね!
お母様方、まだまだ幸せな時間をたくさん楽しんでください。読み聞かせは、言葉を覚えたり考える力がついたりするだけではないのです。何十年経っても、その時の情景も含めた母親、父親の想いを残すことができるのです。膝の上に乗って読んでもらった、寝る時に隣で読んでもらった、そんなお母さん、お父さんの愛情をきっと忘れないでしょう。卒業の日はいつ来るか分かりません。今を大切にして下さいね。
余談ですが、少し前に娘達と女三人旅で鳥取に行ってきました。私は、母親になって知った『こんとあき』という絵本が大好きで、いつか舞台となった鳥取砂丘へ行きたいと思っていたのです。登場する『こん』のぬいぐるみを持って、絵本にも出てくる電車に乗って、念願の鳥取砂丘へ。
20年以上前に読んでいた絵本ですが、娘達も好きで『こんとあき』談議に花を咲かせながら旅を楽しみました。この絵本に出会ってなかったら鳥取への旅もなかっただろうな~。絵本って大切な時間を沢山与えてくれるものなのですね。
参考文献 中川李枝子「子どもはみんな問題児。」新潮社